■『「不服審査」〜論説委員室から』より抜粋

『不服審査』〜論説委員室から
--朝日新聞(夕刊)平成10年7月28日 より--

 社会保険審査会の委員に、大手損害保険会社の前大阪支店長が就任して一カ月が過ぎた。

 前任の厚生官僚OBに代えて新しく民間出身者をあてることにこの人事の意味はあった。

 もらえるはずの年金がもらえない。保険料が高すぎる。そんな年金や医療保険についての不満を訴えて審査してもらうのが、社会保険審査制度である。

 社会保険についての行政、健保組合などの裁定の誤りを正し、国民の権利擁護と被害者救済を進める不服審査制度だ。

 制度は二審制。行政側などの決定がおかしいと考えた場合まず都道府県庁の社会保険審査官に不服審査を請求する。その結論に納得がいかなければ、中央の社会保険審査会に再請求をする。

 ところが、地方の審査官はいずれも社会保険担当職員の中から選ばれ医療保険や年金の担当課長の隣に席がある。よほどでないと、身内が行った決定を否定する判定は出しにくい。都道府県の審査結果は、行政側に有利な判定が圧倒的に多い、と関係者が認めている。

 中央の審査会はどうか。六人の委員は特別職の国家公務員で任命には国会の承認が必要だ。しかし、従来は全員が厚生省のOBだった。しかもたいてい裁定を下した当の社会保険庁の元幹部が含まれていた。

 これでは中立で公正な審理が期待できない、と国会で指摘があり厚生省OBを委員の半数以下にする方針が決まった。1996年12月の委員交代時に初めて民間出身者が起用され、今回は二人目である。

 来年二月には、元社会保険庁長官の委員長を含む二人の委員が任期満了となる。後任の人選を注目したい。

 だが、権利擁護を十分なものにするには、地方の審査官の人選を含めてもっと根本的な改善策が必要ではないか。  <丘>

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