03■日本年金機構の審査の実態

注意深さに欠けたずさんな審査の実例


 Kさんは、障害の状態が1級にも2級にも該当していないという理由で、障害年金が不支給になりました。

 Kさんの障害の原因となった傷病名は「乳がん」です。

 したがって「乳がん」に対して適用する認定基準は「悪性新生物による障害」になります。

 ところで、「悪性新生物による障害」に係る診断書については、第120号の7という様式を使用しますが、この様式は、都合により、「血液・造血器の障害」と「その他の障害」が兼用となっています。

 Kさんの障害は「悪性新生物による障害」ですので、医師が様式第120号の7でKさんの障害の状態を記載する場合、裏面の㈾「その他の障害」欄に記入しなければなりません。

 しかしながら、Kさんの主治医は当該様式の記入の仕方について書き慣れていなかったために、誤ってKさんの障害の状態を⑬「血液・造血器の障害」欄に記入してしまい、⑮「その他の障害」欄のほうを抹消してしまいました。

 診断書を受け取った後,自宅で主治医の誤記入に気がついたKさんは、電話で主治医に書き直しを求めましたが、主治医はKさん人の通院している病院の専属医師ではなく、他院から出向しているという事情があったため、「書き直しには1カ月以上かかります」と告げられてしまいました。

 このとき、すでにKさんが入手していた添付書類等の期限切れが間近でしたので、全書類の提出を診断書の書き直しの時期に合わせることになれば、再度、これらの添付書類を役所まで取り直しに行かねばならなくなり、Kさんは、当時の体力・体調でこれを行うのは無理と判断しました。

 そこで、Kさんは、誤記入された診断書の不備を補完すべく、現症の状態を詳しく述べた「意見書」を任意で追加することにしました。

 そして、とりあえず保険者(日本年金機構)へ全書類を提出することで、まずは添付書類の期限をクリアし、診断書の訂正等については、受理後、当然、日本年金機構から来るものと予想された診断書の不備を指摘する照会を待つことにしました。

 しかしながら、日本年金機構は、Kさんに診断書の訂正を求めることもなければ診断書の不備を指摘することもなく、そのまま誤記入が明白な診断書を以てKさんの障害の状態を審査し、「不支給」にしてしまったのです!

 この日本年金機構の行為は、まさに怠慢そのものであり、信義にもとる行為であることは明白です。

 当然のことながら、誤記入された診断書では、公正な審査など到底行うことができません。

 そこで当事務所は、審査請求(不服申立)前の確認事項として、日本年金機構に対し、Kさんの障害の状態が2級にも該当しないと判断した理由を照会しました。

 その結果、日本年金機構は、適用した認定基準については「第16節/悪性新生物による障害」としながらも、「⑮の臨床所見では,疲労感,動悸,息切れ,関節症状,リンパ節膨張のおよそ半分が『有』とありますが,『著』はなく」と回答してきました。

 しかしながら「悪性新生物による障害」では,障害の状態を臨床所見で判断する規定がないことから,これを以て2級非該当の根拠とした日本年金機構の判断および回答は,誤りであり、苦し紛れの言い訳にすぎません。

 さらに、日本年金機構は「⑨現在はホルモン治療中のみであること」とも指摘しましたが、これまた「悪性新生物による障害」にはこのようなことを判断する規定がなく、やはり、これを以て2級非該当の根拠とした日本年金機構の判断および回答は、誤りであり、苦し紛れの言い訳でしかありません。

 ところで、日本年金機構は「⑫の一般状態区分表では『ウ 歩行や身のまわりのことはできるが…』と『ウ』に該当しています。」と指摘し、一般状態区分表が「ウ」である点を2級非該当の根拠として回答しています。

 しかし、「悪性新生物による障害」の認定基準では、ウは2級と3級の両方に該当する程度となっています。

 したがって、特別な事情又は合理的な理由がない限り、Kさんの場合のウは2級と判断すべきです。

 しかしながら、この点について、日本年金機構は特別な事情も合理的な理由も明示しないまま、ウを3級(2級非該当)と決めつけ、敢えて不利益な扱いをKさんに対してしました。

 以上だけでも、Kさんの障害について、無責任極まる審査をされてしまった経過がありありと想像できます。

 

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