共同通信配信記事より

審査医の負担、地域差14倍

障害年金支給に不公平も
「書類1件、十数秒」

共同通信社配信

 国の障害年金の支給・不支給を審査するため都道府県ごとに置かれている医師(認定医)の人数にばらつきがあり、1人当たりの担当件数で見ると最も多い神奈川県と最少の鳥取県で約14倍の差があることが3日、共同通信の調べで分かった。

 認定医の引き受け手確保が難しい地域が多く、国の対策も不十分なことが原因。認定医の負担が重い地域では、不十分な審査で支給されるべき人が漏れたり、基準に達していない人に年金が支払われたりしている恐れがある。認定医からは「更新のケースでは書類1件を十数秒で見ており、まともな審査はとてもできない」との声が上がっている。

 障害年金を受け取るには、主治医の診断書などの書類を日本年金機構に提出する。人によっては1〜5年ごとに更新も必要。審査はほぼ書類だけで、多くの人が受ける障害基礎年金の場合、機構の都道府県事務センターから委託を受けた各地の認定医が審査している。

 共同通信は、年金機構が開示した2013年度の障害基礎年金の新規請求件数と、各都道府県の認定医数を基に、1人当たりの担当件数を算出。

 神奈川では認定医が4人しかおらず、審査に至らず却下されるケースも含め、1人当たり年間1154件を担当する計算だった。鳥取は同80件で、14・4倍の開きがある。神奈川の人口は鳥取の約15倍だが、認定医数は鳥取の方が多く、5人いる。 1人当たりの担当件数の都道府県平均は343件。

 神奈川の次に負担が重いのは大阪(1人当たり年879件)で、兵庫(788件)、北海道(765件)が続いた。

 障害基礎年金をめぐっては、不支給になる割合に都道府県間で約6倍の差があることが分かっている。年金機構が原因を調べており、近く調査結果を公表する。

 認定医1人当たりの担当件数と不支給割合の間に明確な相関関係はみられず「件数が多いと審査が甘くなる」といった単純な構図ではなさそうだ。年金機構は「認定医が少ない地域でどのような問題が生じているか、把握したい」としている。


 障害年金 公的年金の加入制度に応じて障害基礎年金、障害厚生年金などがあり、受け取るには障害の程度や保険料納付期間など要件を満たす必要がある。「基礎」は2階建ての年金制度の1階部分に当たり、障害年金受給者の多くが受け取る。
「厚生」の場合は日本年金機構の本部が一括して審査するが、「基礎」は同機構の都道府県事務センターごとに審査している。支給額は「基礎」の1級で月8万500円、2級で月6万4400円。受給者は2013年3月現在、障害年金全体で約190万人。


 障害年金の審査ばらばら
「誤判定、確実に存在」
 現場の医師、国に不満

 障害がある人の生活を左右する障害年金で、審査に当たる医師(認定医)の負担に地域差があり、ばらばらの体制で支給・不支給が決められていることが分かった。「間違った判定が確実に存在すると思う」「事実上、流れ作業だ」。現場の認定医からは現状を問題視する声や、増員の努力を怠ってきた厚生労働省と日本年金機構に対する不満が出ている。

 ▽そのまま判定

 障害年金では、症状が変動しない手足の欠損などは「永久認定」となって更新は不要だが、精神障害などは1〜5年ごとに更新手続きをして審査を受けなければならないことが多い。

 認定医は新規申請に加え、更新の審査もこなす。1人当たりの審査件数が多いある県の認定医は「更新のシーズンになると山のように書類が届き、とてもじっくりは見られない。年金機構の担当者が『変化なし』と分類していれば、ほぼそのまま『支給継続』と判定する。丁寧に見たほうがいいとは思うが、件数が多すぎるので仕方がない」と話す。

 厚労省は「障害の状態が適切に反映されるよう、認定医はきちんと判定している」との見解を示しているが、西日本のある認定医は「更新の場合は1件にかけられる時間は数秒から十数秒」と明かす。「支給されるべき人に支給されないとか、その逆のことが多くの地域で起きているはず。反省を込めて、この状況はいけないと思う」

 ▽増えない担い手

 認定医は「外部障害」「内部障害」「精神の障害」で三つに大別されているが、さまざまな障害を審査しなければいけないことに加え、自身の診療と並行しての任務で負担が重いため、なかなかなり手がいないという。

 首都圏の認定医は「障害年金の受給者は増えているのに、私の地域では認定医の数は増えていない。国は担い手の確保にもっと努力してほしい」と訴える。

 地域間で支給・不支給の判定に大きな差が出ていることについては、複数の認定医が「ばらつきをなくすために定期的に開かれていた認定医の全国会議が開かれなくなったためだ」と指摘する。

 1990年代後半までは毎年1回、各地の認定医を集めた会議が開かれていたが、それ以降は判定基準の改正などがあったときだけ開く形に変わったという。厚労省と年金機構は「昔の開催実績は資料が残っておらず、事実関係は確認できない」としている。

 ある認定医は「不支給割合の地域間格差は、昔は今ほどひどくなかったはず。(前身の)旧社会保険庁時代を含め、年金機構が会議や指導をきちんとしてこなかったのが一因だ」と指摘した。

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