共同通信配信記事より

障害年金地域格差、3年放置

厚労省、認識後も調査せず
開示の会議録で判明

共同通信社配信

 国の障害年金を申請して不支給と判定される人の割合に最大6倍の地域差がある問題で、厚生労働省が遅くとも2011年に問題を認識しながら昨年まで実態を調査せず、支給実務を担う日本年金機構の対策が後回しになっていたことが10日、共同通信の情報公開請求に対して開示された会議録で分かった。

 地域による判定のばらつきは昨年、共同通信の取材で判明。厚労省と年金機構が対応に乗り出したのはその後で、今年2月に専門家検討会を設置し、客観的な判定指標の策定などを進めている。

 多くの人が受け取る障害基礎年金では、年金機構の都道府県事務センターが各地の医師(認定医)に審査を委託しており、機構は11年11月、全国の認定医を集めた会議を都内で開催した。

 開示された議事録によると、会議に出席した厚労省の担当者は「同じ障害の状態であるにもかかわらず、(地域によって)等級(の判定)が違うことがある」と指摘。

 さらに、各事務センターで審査する障害基礎年金と、機構本部が一括で扱う障害厚生年金の間でも違いがあることに触れ、「国民(基礎)年金、厚生年金で異なる判断をしているのはまずい」との認識も示していた。

 担当者は「認定の均一化が最重要課題」として、判定にばらつきが出ないよう審査基準の改正と年金機構の事務運営の見直しを図る考えを表明。しかし厚労省は基準改正は実施したものの、実態を把握するための調査には乗り出さず、事務運営見直しは進まなかった。

 この担当者は取材に対し「業務の優先順位があり、何もかもはできなかった」と話している。  障害基礎年金をめぐっては、審査件数全体に占める不支給判定の割合が、10〜12年度平均で最高の大分県(24・4%)と最低の栃木県(4・0%)で6・1倍の開きがあることが分かっている。

 厚労省担当者の発言要旨

 日本年金機構は2011年11月18、30両日、都内で「全国障害認定医会議」を開催した。障害年金の判定地域差に関し、厚生労働省の担当者が会議で発言した内容の要旨は次の通り。

 「認定の均一化が最重要課題だと認識している。同じ障害の状態であるにもかかわらず、等級が違うということがある」

 「県によって違うとか、国民年金、厚生年金で異なる判断をしているのはまずい。実際にそういうところが若干ある」

 「全国どこで年金をもらっても同じように判断されていなければ、国民の皆さんとしては不公平感を感じるので、均一化を図っていきたい」

 「現行制度の中でいろいろ矛盾が生じていて、これから制度改正も進めていく予定だが、法律改正となると国会承認が必要なのでなかなか難しく、時間がかかる。どれだけ公平に年金を支給していけるか。何かできる対策を取っていきたい」

 「認定基準の中に記載することで解決することと、運用ルールの中で整理することと二つあると思う。実態に合わせた基準づくりを進めたい」

 「適正な年金を支給できるように、機構と厚労省の担当部署で連携を密にして、取り組みをしていきたい」

 優先順位低く、改正後回し
 障害年金の地域差放置

 【解説】約3千万人が受け取る老齢年金に比べ、障害年金の受給者は200万人程度。国民の認知度が低いこともあって、実は矛盾や不備が多いのに、障害年金の制度や運営の見直しは後回しにされてきた。その構図は今も変わらない。

 2011年の認定医会議で厚生労働省の担当者は、制度に「いろいろ矛盾」があることを認めた上で「法律改正となると国会承認が必要なので難しい」とも発言している。つまり、現実的に手を付けられる範囲内でのみ対応するということだ。

 しかし、それでは根本的な解決にならない。つぎはぎだらけの制度に、障害者も現場の職員も振り回されている。

 判定の地域差について厚労省は検討会を設置したが、議論の対象は、特にばらつきが大きかった精神障害と知的障害だけ。同省が考える見直しの方向性には、障害者団体などから「小手先の対応で、余計に混乱するのではないか」といった懸念が出ている。

 厚労省内で障害年金の問題は優先順位が低いまま。抜本的な改正をしようという雰囲気には乏しい。検討会は夏に報告書をまとめる予定だが、それで幕引きとすることは許されないだろう。

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