共同通信配信記事より

障害年金、判定不服3倍増  

14年度6500件
支給厳格化が背景か

共同通信社配信

 障害年金を申請して不支給と判定されたり、更新時に支給を打ち切られたりした人が 不服を申し立て、国が審理、決定した件数が 2014年度は約6500件に上り、10年前の04年度に比べ3・5倍に増えたことが19日、分かった。

 支給申請自体は微増で、それなのに不服申し立てが急増しているのは、日本年金機構の判定が不透明なため納得できない人が増えていることや、支給判定の厳格化が背景にあるとみられる。

 年金や健康保険では、給付など国の決定に対し不服申し立てができる「審査請求」という制度がある。二審制で、最初は地方厚生局(四国支局を含め全国8カ所)の「社会保険審査官」に申し立て、その決定に納得できない場合は、厚生労働省本省に置かれる「社会保険審査会」に再審査請求ができる。近年は全体の6〜7割を障害年金が占める。

 厚労省の公表データや各厚生局への取材によると、国民年金、厚生年金などの「障害給付」に関する一審段階の件数は04年度で1851件だったが、年々増加。特に10年度以降に急増し、13年度には6692件に達した。14年度は微減したものの、04年度比3・5倍の6474件だった。二審段階の件数も10年間で4・4倍に増えた。

 一審で申し立てが認められた割合は00年度以降、7〜13%で推移していたが、14年度は6%と15年間で最低だった。

 障害年金のうち多くの人が受け取る障害基礎年金をめぐっては、支給の可否を決める年金機構の都道府県事務センター間で判定にばらつきがあり、不支給判定の割合に最大6倍の地域差があることが判明している。

 10〜13年度の4年間で不支給割合は1・3倍、支給停止・減額になる人はデータの確認できる県で1・6倍にそれぞれ増えており、「判定が厳しくなっているのではないか」との指摘が出ている。


 社会保険の審査請求 公的年金や会社員が加入する健康保険などで、給付内容や保険料決定に不服がある場合、60日以内に不服申し立て(審査請求)をすることができる。まず地方厚生局の社会保険審査官に申し立て、その決定に不服があれば、厚生労働省に置かれる社会保険審査会に再審査請求する。審査会の裁決にも納得できない場合は、裁判所に訴えることができる。審査会の委員は元判事や医師、社会保険労務士らだが、地方厚生局の審査官は厚労省の現役職員から選ばれている。


 年金機構、説明責任が欠如
 障害年金不服申し立て急増

 【解説】障害がある人の暮らしの「命綱」ともいえる障害年金だが、日本年金機構による支給・不支給の審査は極めて心もとない態勢で行われている。打ち切りや支給減額となった場合でも理由はほとんど説明されず、泣き寝入りしている人も多い。今回判明した不服申し立ての件数でさえ、氷山の一角とみられる。

 障害年金は、判定を委託された医師たちが実質的に支給の可否を決めている。医師の個性や考え方によって判定が左右される構造が、不公平を生んでいる主な原因だ。

 その上、1〜5年ごとの更新に伴って打ち切りや減額となっても、年金機構は「障害の状態が変わったため」と通知するだけ。障害者が納得できないのは無理もない。

 障害年金を新規に申請して不支給と判定される人の割合や、更新時に支給停止・減額となるケースは近年増加しているが、その理由も明らかにされていない。

 障害年金の実務では、あらゆる局面で年金機構の説明責任が果たされておらず、それが不服申し立ての急増を招いた要因だろう。

 障害年金不服申し立て増加 受け付け封じる動きも
 少人数で審理は滞留

 障害年金の不支給や打ち切りに納得できない人が増えている。不服申し立てを受けた審理件数は10年間で3・5倍増の年約6500件。だが、申し立てを審理する態勢は半世紀の間、変わっていない。担当者の人数が限られて審理は滞留。内部から改善を求める声が上がっても放置され、受付窓口では不服申し立てを封じるような動きすら出ている。

 ▽8カ月

 「受付件数の増加により、裁決まで平均で8カ月程度を要しています」

 香川県に住む身体障害者の50代男性は今年3月、国の社会保険審査会から通知を受け取った。以前は片脚だけだった障害が病気の悪化で両脚になり、年金の増額を申請したが認められず、再審査請求に至った。

 二審制となっている不服申し立ての審査に当たる担当者は、驚くほど少ない。一審に当たる地方厚生局の社会保険審査官は定数が全国で102人。二審段階の社会保険審査会の委員は6人。件数は昔と比較にならないほど増えているのに、約50年前から同じ人数だ。

 審査会の審理期間は2009年度には平均約5カ月だったが、今や「迅速な救済」という本来の役割を果たせていない。男性は「8カ月もかかっていたら、障害が重い人の中には亡くなってしまう人もいるんじゃないか」と憤る。

 ▽権利制限

 「上司から『審査請求(不服申し立て)を受けるな』と言われたことがありました」。関西地方の年金事務所を今春退職した日本年金機構の元職員は、こう打ち明ける。

 「『丁寧に説明し、納得してもらうように』というのが建前だったが、申し立て件数を増やしたくない意図が明らかだった。国民の権利の制限になるので、問題だと思った」と元職員。

 一方で、障害者団体などには「年金事務所で『不満があるなら、審査請求してください』と突き放すように言われた」という相談も寄せられる。

 各地方厚生局の社会保険審査官はホームページに「審査請求を行うときは、あらかじめ年金機構などから決定の内容について詳細な説明を受けてください。単なる要請、陳情など不適切な審査請求になる場合があるからです」といった案内文を載せている。しかし、機構から不支給判定などについて詳しい説明を得られることは少ない。

 障害基礎年金の判定事務を担うのは、機構の都道府県事務センター。現役職員によると、あるセンターでは判定する医師と担当職員の間で判断理由などについてメモが交わされるが、申請者への説明のため年金事務所に書類を送る際は、メモを一切添付しないという。

 そのため申請者には不支給になった理由は伝わらない。この職員は「メモを出すと余計に突っ込まれるから、そうしているのだと思う」と話す。

 ▽ぬかにくぎ

 障害年金支給の申請自体は、増加傾向にあるが小幅な伸びだ。一方で不服申し立てが急増しているのは、機構の判定に不満を抱く人が増えていることを物語る。

 社会保険審査会の委員からは、厚生労働省に改善を求める声が何度も上がっていたという。

 ある元委員は「機構の判定の地域差は何年も前から指摘していた。厳しすぎる不支給判定を審査会で覆しても、同様の事例が繰り返される。委員の増員要求も聞き入れられず、ぬかにくぎだった」と証言。「今のままでは国民のためになっていない」と嘆いた。

F研マーク > 障害年金の手引 > 共同通信配信記事より > 戻る