共同通信連載企画「障害年金を問う」より

(3)就労で支給停止

 本来、就労と障害年金の支給とは直接関連する性質のものではありません。就労の事実のみで、障害の程度が軽くなったということにはならないからです。

 また、大変多くの方が誤解されているのですが、基本的に障害年金には所得制限はありません。(ただし20歳前障害の場合には例外的に所得制限がもうけられています。)

就労で支給停止

「働く意欲なくなる」
 自立支援と矛盾

共同通信社配信
(掲載誌は下記参照)

 「なぜ息子は障害が軽くなったと判定されたんでしょうか」

 「働き続けられているからです」

 今年1月、兵庫県加古川市の 加藤良枝 (かとう・よしえ) さん(51)=仮名=は、軽度の知的障害と自閉症がある長男、 直人 (なおと) さん(26)=同=の障害年金について日本年金機構の兵庫事務センターに電話で問い合わせ、担当者からこう告げられた。

 電話の約1カ月前、直人さんは「障害の等級が2級から3級に下がったため、月約6万4千円の年金を停止した」という通知を受け取っていた。生まれつきである知的障害の場合、20歳から障害基礎年金を受け取ることができるが、最も軽い3級と判定されると、支給されなくなる。

 直人さんは特別支援教育の高校を卒業後、小売業の会社に障害者雇用の枠で就職。店舗での品出しや清掃などをしていたが、年金を打ち切られた昨年は週3回のパート雇用で月給は5万円程度にすぎなかった。

 それでも支給停止なのか。直人さんは「働く意欲がなくなった」と肩を落とす。良枝さんは「今は私たち親と暮らしているから何とか大丈夫だが、親亡き後、月5万円では生活できない」と不安を隠せない。

 「就労の事実のみで障害が軽くなったとはみなさず、支援の状況などを総合的に判断する」というのが年金機構の公式見解だ。

 だが、実態は異なる。障害基礎年金の申請書類に就労の記載があるかないかで判定がどう変化するか、年金機構が知的障害と精神障害について2012年度のデータを調べた結果、都道府県事務センターごとにばらつきがみられた。

 例えば、群馬は「就労の記載なし」だと年金不支給の人の割合は12%にすぎないのに、「記載あり」では50%に跳ね上がる。埼玉、千葉、山口なども記載の有無で2倍以上の差があった。

 元労働基準監督官で、加藤さん親子の相談に乗る神戸市の社会保険労務士、 角森洋子 (かくもり・ようこ) さんは「厚生労働省は『障害者も就労して自立を』と促す一方で、働くと年金を停止する。やっていることが矛盾している」と批判する。

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仕事していても受け取れる

 障害年金は、働いていても条件を満たせば受け取ることができる。成人前に負った傷病の場合、障害の種別を問わず、保険料を納めなくても20歳から年金を受け取れる(所得制限あり)。ただ知的、精神障害では、就労したことで「生活能力が向上した」とみなされ、支給停止や減額になることがある。身体や視覚、聴覚の障害では、就労を理由とした支給停止や減額はない。


掲載誌(順不同): 東奥日報(青森県)2015/05/11朝刊〜; 河北新報(宮城県)2015/05/12夕刊〜; 秋田魁新報2015/05/11朝刊〜; 山形新聞2015/05/12朝刊〜; 北國新聞(石川県)2015/05/13朝刊〜; 埼玉新聞2015/05/11朝刊〜; 千葉日報2015/05/12朝刊〜; 四国新聞(香川県)2015/05/11朝刊; 西日本新聞(福岡県) 2015/05/13夕刊〜; 長崎新聞2015/05/11朝刊〜; 熊本日日新聞2015/05/13夕刊〜

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