共同通信連載企画「障害年金を問う」より

(5)不適切な窓口対応

 障害年金の受給が認められるかどうか以前の問題として、障害年金を申請する権利さえ侵害される事例が、年金事務所の窓口ではしばしば見られます。

 「申請しても通らない」「老齢年金の障害者特例は受けられない」などと根拠のない誤った説明をされたり、「年金事務所が申請書類をくれない」など、申請にたどり着くまでに疲弊してしまうという障害者の方からの相談が後を絶ちません。

不適切な窓口対応

書類もらえず門前払い
 社労士申請、一転認める

共同通信社配信
(掲載誌は下記参照)

 1時間半にわたり、障害による生活の困難を訴えたが、ついに申請書類はもらえなかった。

 2010年夏、千葉県の 徳田隆 (とくだ・たかし) さん(46)=仮名=が障害年金の申請に訪れた年金事務所。窓口の男性職員は「上に送っても認められないと思う。申請しても無駄です」の一点張りだった。

 「なぜあんな言い方をしたのか。せめて申請するチャンスは与えてほしかった」。悔しい思いは今も消えない。

 徳田さんは一見すると障害があるようには見えず、40歳になってから軽度の知的障害と発達障害と診断され、障害者手帳を取得した。このとき手帳を交付した市役所からも、障害年金に関する説明は一切なかった。

 その後、大手企業に障害者雇用枠で就職したものの、手取りは最低賃金の約8万9千円。「いずれ両親は亡くなる。自立しなくては」と悩んでいたころ、障害年金を知り、母親(76)と年金事務所に足を運んだ。

 見知らぬ人とうまく話ができない徳田さんに代わり、母親が障害に伴うギャンブル依存に苦しんだ過去や、体調の波と闘いながらフルタイムで働いている現状を訴えた。

 障害者手帳も見せたが、男性職員は年金支給に否定的な見通しを繰り返すばかり。徳田さんは「年金なしでは将来生きていけないんじゃないかとすごく不安になったが、諦めるしかなかった」。

 ところが、かかりつけ医を通じて千葉市の社会保険労務士、 岩崎真弓 (いわさき・まゆみ) さんに相談し、申請手続きを代行してもらったところ、11年秋にあっさり障害基礎年金2級の受給が認められた。

 申請は誰にも認められている権利だ。しかも「窓口は相談や請求を受け付けるところ。受給できるかを判断する場所ではない」(岩崎さん)。こうした不適切な窓口対応には、障害者団体から「生活保護と同じ『水際作戦』だ」との声も上がる。

 日本年金機構のある元職員は「支給を絞ろうというより、障害年金は制度が難しくて手間がかかるので、多くの職員が受けたがらないというのが実情。文書で受け付けてしまうと事務処理に時間がかかるため、口頭の対応で済ませようという雰囲気がある」と明かした。

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態勢に構造的問題も

 障害年金は、病気やけがの初診日が国民年金の加入期間中である場合は原則、居住地の市区町村が申請の受付窓口となる。初診日が厚生年金の加入期間であれば、日本年金機構の年金事務所だ。市区町村では職員が人事異動で交代、年金事務所では契約が1年更新の非正規職員が主に対応するため、経験不足から不適切な対応を招くといった構造的な問題がある。


掲載誌(順不同): 東奥日報(青森県)2015/05/11朝刊〜; 河北新報(宮城県)2015/05/12夕刊〜; 秋田魁新報2015/05/11朝刊〜; 山形新聞2015/05/12朝刊〜; 北國新聞(石川県)2015/05/13朝刊〜; 埼玉新聞2015/05/11朝刊〜; 千葉日報2015/05/12朝刊〜; 四国新聞(香川県)2015/05/11朝刊; 西日本新聞(福岡県) 2015/05/13夕刊〜; 長崎新聞2015/05/11朝刊〜; 熊本日日新聞2015/05/13夕刊〜

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